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非モテ的書評『「離活」時代~離婚屋が見た、夫と別れたい妻たち~』

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*画像はあくまでイメージです。

結婚前の予備的な活動として、あるいはよりよい出会いを求める努力としての「婚活」が一定の地位を得た言葉となってしばらく経ちます。

その一方で、離婚するための同じような活動が「離活」と呼ばれるようになっていることも皆さんはご存知でしょうか。

この「離活」、一体どのようなものなのでしょうか。

■「離活」って何?

今回の非モテ的書評は、この離活にまつわるエピソードと概観を説明する本、『「離活」時代~離婚屋が見た、夫と別れたい妻たち~』(三島悟、扶桑社、2010)です。

いわゆる「離活」とは、結婚生活に満足できなくなった、あるいは破綻が明らかになった夫婦の一方(往々にして妻の側が多い)が、離婚する前の準備段階として、より良い離婚を成立するために活動することです。

結婚というのは現行の制度上、基本的には両性の合意と役所への届出で成立し、同じようにして破棄することができます。

ただし、離婚の場合は当事者の感情の縺れや子供の問題もあり、なかなか簡単にはいきません。協議離婚が成立しなければ法廷に持ち込んで裁判離婚となるのですが、この場合は民法第770条所定の理由を満たさなければ訴えることすらできません。

このような縛りがある中で、それでも現状の婚姻関係に我慢が出来ない、DVを受けていて別れたい、というような場合もあります。それに可能な限り助力を施していく探偵業務を遂行する立場の人間が、この本の著者なのです。

平たく言えば、離婚工作。夫にロンドンブーツの番組でやるようなヤラセの愛人をけしかけ、その女性と親密にしているところを写真に収める、わざと夫に冷たくする、姑をたらしこむ、などなど…。

■夫に三行半を突き付ける女性の非情、拙速も

さて、この離活の内容、特にその動機たるや、非モテが見ればもう「そもそも三次元で結婚しなくてもいいんじゃね?」と思うくらい、女性の徹底したリアリズムが反映されています。

できちゃった結婚したはいいが性格や相性が合わない、お見合い・出会い系で出会って結婚したものの相手をよく知らなすぎた…などなど、男性目線から見ればある意味「身勝手」とも言えるような動機で、いとも簡単に離活に踏み切ってあれこれ工作を働く妻たちの姿がそこにはあります。

あるいはそこまで踏み切るのには本人なりの葛藤はあったのかもしれませんが、それにしてもあまりにも急に事が運ばれていく感じが否めません。

著者も巻末の部分で、

「離活を行うにあたっては冷静さと客観的な視点が絶対に必要です。…頭の中が“離婚”という問題に支配され、その問題を消すことだけに躍起になっていたに違いありません…離活とは本来、結婚生活の可否を真剣に考えるところから始めるべきものです。(前掲書190‐208頁より抜粋)」

と結婚・離婚にはやる女性に苦言を呈しています。

あまりにも結婚という形式にとらわれ、急ぎすぎた結果、かえって相手の本質や人となりを見誤り、幻滅する妻たちが多いのだとか。

DVのように人を実際に傷つけるような夫・妻ならともかく、僅かな性格のずれを互いに修正できないのだとしたら、これは結婚以前の、当事者相互の人格的問題と言うべきなのかもしれません。もちろん、金銭・異性にだらしがないといった依存症的な相手は病気の場合もあるので別問題ですが。

■この本が教えてくれること、そして結婚の目的を考えること

この書籍を非モテ的目線で見る、その結果得られる答えは、第一に「リアルな異性(敢えて男女とは言いません)に幻想を抱くな」ということです。

実際の異性はファンタジーの登場人物ではなく、自分と同じように欲得ずくで物を考える可能性があるということ。そして、夫、妻、あるいは異性に対してシビアな目線を注いでいるということです。

非モテであるのは個人の自由なのですが、その思考法のまま異性と接すると、思わぬところで異性を幻滅させていることもありえる、とは言えないでしょうか。

とかく非モテ男女は好きな相手を理想化して接してしまうことが多いですが、向こうも人間。同じように「醜い」存在だと割り切ることが大切なのです。

第二に、「今、結婚という制度そのものが大きく変容している」ということです。

両性の平等と合意というのが日本の法律の定める結婚などの諸制度における建前ですが、果たして、現状の社会との整合性はどれほどあるのでしょう。

異性だけではなく同性同士で結婚したい人も中にはいるでしょうし、個人の尊厳を重視しすぎれば、却って本書にあるような欲望を正当化した、個人の横暴に近い離婚請求で、制度そのものが傷つきかねない。

そのような微妙な問題が、従来の結婚制度に変革を強いているのかもしれません。だから、結婚について少し見方が狭くなっているような場合、もう少し肩の力を抜いて、冷静に現状の社会と個人のあり様を見つめて考え直すことが有効なのではないでしょうか。

たとえ両親や周りが結婚に急がせるような環境であったとしても。

先年ベストセラーになったサンデル教授の『JUSICE:WHAT’S THE RIGHT THING TO DO?』(邦題『これからの正義の話をしよう』)において、同教授は結婚について以下の様に述べています(訳は後実の拙訳です)。これを引用しましょう。

「結婚が一つの名誉的制度ならば、どの美徳がそれに名誉を与えるのだろうか。それを問うことは、社会の一制度である結婚の目的、あるいはテロス(訳注:ギリシャ哲学上の「全ての物が目指す目的」のこと)について問うことなのだ。(同書ペンギンブックス英語版258頁)」

すなわち、この離活本を読むことも、一つの「結婚・離婚の目的」を問うことになるのです。みなさんもご一読、いかがですか?

ところで最近本サイト編集長がいわゆるお見合いパーティーのような場所にお出かけになられたということ、私はその行動力に頭が下がっておる次第です。そんなに年齢違わないのに、アクティヴだなぁ…。

*画像:Amazon

(後実文人)

(参考文献)
『「離活」時代~離婚屋が見た、夫と別れたい妻たち~』(三島悟、扶桑社、2010)
『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』(マイケル・サンデル (著)、鬼澤 忍 (翻訳)、早川書房、2010)

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後実 文人(ごみ ぶんと)
北海道札幌在住のアラサーフリーター。男性。某私立大人文学部卒。特技は英語そこそこ(TOEIC900以上、英検準一級)の他、多少の外国語。10代は非モテDQNバンドマンだったが20代で脱出。海外の英文恋愛関係記事要約のほか、人文書やサブカルの中から非モテの普遍性を探る記事を書くことが目標。色々な人に恩返ししていきたい人生まっしぐら。
Twitter  http://twitter.com/BuntoGomi

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